事案の概要
マンションの区分所有者は、管理組合に対し、マンションの敷地や共用部分等の維持管理のため、管理費や修繕積立金の支払義務を負担している。この管理費等の消滅時効期間は5年か10年か。
2017年(平成29年)の民法改正前は、一般債権の消滅時効期間は10年(旧民法第167条)、定期給付債権の時効期間 は5年(旧民法 第169条)と規定されていた。
そこで、マンション管理費等の債権は、このいずれに該当するかが裁判の争点となった。管理組合は一般債権として消滅時効期間は10年と主張し、区分所有者側は定期給付債権として5年の消滅時効を主張した。
解決への流れ
第一審は定期給付債権には当たらないとして区分所有者側の消滅時効の主張を否定した。これに対し区分所有者側は東京高裁に控訴したが、控訴審でもその主張が認められなかったため、最高裁判所へ上告した。
そして最高裁は「管理費等の債権は、管理規約の規定に基づいて、区分所有者に対して発生するものであり、その具体的金額は総会の決議によって確定し、月ごとに所定の方法で支払われるものである。
このような本件の管理費等の債権は、基本権たる定期給付債権から派生する支分権として、民法第16 9条の債権に該当するものである」として消滅時効期間は5年と 判示した(平成16年4月23日最高裁判決)。
弁護士コメント
当事務所は管理組合からの依頼により、様々な法律相談や各種法的手続を実施しています。
管理組合の代理人として、マンション管理費等の支払請求の法的手続も長年にわたり行っており、その中で他の管理組合に及ぼす影響が大きかったのがこの平成16年の最高裁判決でした。本判決がなされる前は、下級審でも判断は別れ、裁判の都度、10年か5年か、という議論が繰り返されていました。
この議論に終止符を打ったのが本判決です。
消滅時効期間につき結果的に管理組合の主張は認められませんでしたが、その後、大多数の管理組合の管理費等の債権管理は本判決を踏まえて行われることになり、大きな意味があったと考えています。
なお、2017年の民法改正により、一般の債権の消滅時効 期間は、債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年、と改正されたため(改正民法第166条1項1号)、定期給付債権の特則規定を定める意義がなくなり、旧民法第169条の定期給付債権の規定は削除されました。
以上








