倉庫の一区画の賃貸借契約について借地借家法の適用が問題となった事例

 事案の概要(※プライバシー保護のために一部事実を加工しています。)

開発事業者(A社)が、産業施設用地とその敷地内の施設(工場・倉庫等)を競落し、施設を全て解体して再開発を行おうとしました。しかし、突然、「その競売物件内の倉庫の一区画を借りているため、倉庫の解体工事を行うな」と主張し、建物解体禁止等仮処分命令(民事保全手続)を申し立ててきた会社(B社)がありました。

そこで、A社は、倉庫の解体と再開発事業を早期に再開すべく、弊所に対応を依頼されました。

 解決への流れ

B社は、倉庫の一区画の賃借権取得が抵当権設定よりも前であったため、B社の賃借権は借地借家法上の対抗要件により、A社の所有権に対抗できる旨主張しました。

これに対し、当方は、本件に借地借家法の適用はないため、A社の所有権はB社の賃借権に対抗できると主張しました。

審理の結果、裁判所は、当方の主張を認め、本件に借地借家法の適用はないと考えたため、B社は仮処分命令の申立てを取り下げし、A社は倉庫の解体と再開発事業を早期に再開することが出来ました。

 弁護士コメント

本件では、倉庫の一区画の賃借権について、借地借家法上の対抗力(賃借物件の引渡しを受けるだけで、新たな所有者等の第三者に賃借権を対抗できる権利)が付与されるか否かが問題となりました。

弊所では、借地・借家に関する法律問題を多数扱ってきた実績と経験から、本件では、B社が借りていた倉庫の一区画について、借地借家法上の「建物」に該当せず、したがって借地借家法の適用がないためにB社の賃借権には借地借家法上の対抗力が認められない可能性が高いとの見通しを立てました。

そして、民事保全手続という、訴訟手続に比べて相当短期間で行われる手続期間内で、借地借家法上の「建物」該当性についての裁判例等を丁寧に調査し、裁判所に対して本件倉庫の一区画に「建物」該当性がないことを説得しました。

その結果、裁判所は、当方の主張を全面的に採用し、上記の結果を得ることが出来ました。

*今回の裁判所の判断は弊所の裁判対応により得られた事例判断であり、倉庫の一区画であっても借地借家法上の「建物」と認められる可能性はあります。

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