事案の概要
依頼者(X)は、A建物で営業している法人であり、A建物に至る唯一の通路(本件通路)を相手方(Y)から賃借していたところ、Yが本件通路の入口に車両等を駐車するなどしてA建物の営業を妨害しているとして、本件通路の賃借権に基づき、通行妨害行為の差止め及び営業損害の損害賠償等を求めたものです。
なお、XとYとの間には、A建物付近に、Yが取締役を務めているZ会社がA建物と同様の営業をしているB建物があり、Zの株式の帰属等をめぐるXY間の紛争その他のXY間の紛争が別途複数存在していました。
X側は、Y側がXの営業にダメージを与えて、複数の問題を有利に解決したい意向があったのではないかと考えていました。
解決への流れ
Xは、Yに対して、通行妨害禁止の仮処分を申立てたところ、Yは、駐車等の一定の行為の関与を認めたものの、自己の土地のため必要な工事のためであるなどと主張しました。
裁判所は、審理の結果、通行妨害禁止の仮処分決定を下しました。
その後、Xは、Yに対し、通行妨害禁止の本訴及び営業妨害に基づく損害賠償請求を行いました。
第1審裁判所は、通行妨害禁止請求及び営業に関する損害賠償の一部を認めました。
高等裁判所では、Yの本件通行妨害禁止の確約、X、Y間におけるその他の問題を含めた金銭問題等の全体的な解決を図る和解が成立しました。
弁護士コメント
本件通路は、入口付近の車両駐車その他のA建物の営業妨害が疑われる行為が断続的に行われたものの、行為者が特定できないものもあり、また、駐車等に関しても通行自体は可能な状態が保たれており、通行妨害禁止請求が認められるか否かについては懸念点もありました。
この点については、写真その他の客観的な資料に基づき、駐車態様、時期、頻度、背景事情等を詳細に主張立証したことにより、裁判所にY側の主張の不自然性、不合理性等を認めていただけたと考えています。
1審では、この流れを引き継ぎながら、和解協議も行いましたが、複数の問題を抱えていたこともあり、結局和解が成立せず、通行妨害禁止請求と営業損害を一部認める判決となりました。
営業損害については、妨害行為によって生じた営業利益の減少の立証は一般的には困難ですが、客観的な会計資料及びこれに基づく具体的な売上、利益の変遷等を主張立証することによって一定の損害を認めてもらうことができました。
高裁では、和解協議が中心となりました。
全体的な解決を模索して努力した結果、複数の紛争をすべて解決する和解協議が成立しました。
Y側の代理人は、当職より10年程度先輩の方でしたが、和解の席上で最後に「本件で和解できるとは思わなかった」と言われたのが大変印象に残っています。
本件では、法律論に則った客観的な資料に基づく詳細な事実確認・主張等を丁寧に行い、最後まであきらめずに交渉を続けると全体的な和解という当事者双方にとって非常に良い解決に至ることがあるということを実感いたしました。








