事案の概要
不動産会社がマンションの建設工事において敷地に接する私道を通って工事車両等の出入りを確保する必要があったため、私道所有者に対して私道の使用を申し入れましたが、拒絶されました。
不動産会社からの依頼を受け、私道の所有者と任意の交渉を行いましたが、私道の所有者はどのような条件を提示しても私道の使用を認めなかったため、不動産会社は私道を使用した工事を開始しました。
これに対し、私道所有者は、私道の所有権に基づき、不動産会社による私道の通行・使用を禁止する仮処分を申し立てました。
解決への流れ
私道の所有者は、判例(最判平成9年12月18日等)を引用し、不動産会社は私道を通行することにつき日常生活上不可欠の利益を有する者ではないから、その通行を禁止することも許されると主張しました。
これに対し、不動産会社は、上記判例は現に私道の通行を阻害している私道の所有者に対して妨害排除請求が認められるための判断基準を示したものであり本件には適用されないこと、また、私道の所有者が恣意的に第三者の通行を妨げることは所有権の濫用(いわゆる権利の濫用)として許されないと主張しました。
一審決定、二審決定ともに私道の所有者の申立てを斥けましたが、特に二審決定は、道路としての通常の利用の範囲を逸脱しているとか、私道所有者に著しい損害を与える等の特段の事情のない限り、特定の第三者の通行を禁止することは権利の濫用として許されないことを明確に判示しました。
これによって、私道の所有者は、不動産会社の通行・使用を禁止することを諦めたため、不動産会社は円滑にマンション建設事業を完了することができました。
弁護士コメント
私道の通行・使用をめぐっては、私道の所有者との関係で非常に難しい法律問題が存在します。判例の解釈や、事案の詳細に関しては、コラムの欄をご参照ください。
*上記二審決定は高等裁判所による決定であり、最高裁判所による確定判例ではないことにご留意ください。








