事案の概要
債権回収会社の依頼により債務者と取引をしていた関連会社に対して仮差押えの手続を行ったうえで詐害行為取消訴訟を提起し、審理が進んでいたところ、債務者が民事再生手続開始の申立を行いました。
民事再生法140条は、再生債権者が提起していた詐害行為取消訴訟について、監督委員がこれを受け継ぐことができると定めています。ところが、債務者の作成した再生計画案では、監督委員は詐害行為取消訴訟を引き継がないものとされ、仮差押えしている資産額を大幅に下回る金額を一括して債権者らに弁済し、残債は免除される内容となっていました。
監督委員も、この再生計画案を支持したことから、再生計画案は債権者の多数を以って決議され、裁判所も再生計画を認可する決定を行いました。
このままでは、仮差押えをした資産が宙に浮いてしまい、より少額の弁済に甘んずる結果となりますが、それを回避して仮差押えした資産を債権者らへの配当に回すことができないかがここでの課題です。
解決への流れ
民事再生法174条2項4号は、再生計画の決議が「再生債権者一般の利益に反するとき」(代表例はより多額の配当原資を見込める再生計画が現実にある場合)は、裁判所は再生計画の不認可を決定すると定めています。
既に一審裁判所は再生計画を認可する決定をしているため、債権者としては、このような再生計画は不認可にすべきであったとして高等裁判所へ即時抗告する手立てがあります。
本件では、高等裁判所での審理を通じ、監督委員が係続中の詐害行為取消訴訟を引き継いだ方が現実的により高い配当率を可能にすることを明らかにできたため、一審決定は取り消され、差し戻しとなりました。
その結果、一審裁判所は債務者に対して再生計画案の修正を命じ、監督委員が詐害行為取消訴訟を受継する内容の新たな再生計画が決議され、認可されることになりました。
さらに、監督委員が受継した詐害行為取消訴訟(債権者は補助参加した)においても、仮差押えした資産を債権者らへの配当原資とできる有効な解決が図られました。
弁護士コメント
民事再生手続(平成12年施行)の運用開始当初は、当時の時代背景もあり余りに多く申立てがなされた事件を効率よく処理することに主眼が置かれていた面がありましたが、本件は、再生計画の妥当性を確保すべき点から上級審によるストップがかけられた事案といえます。
詳細については、金融・商事判例№1173号(P9~)、並びにコラムの欄をご覧ください。








